第12章 問題10 攘夷浪士
何を言っているのか全く理解出来ずに首を傾げている優姫の頭を乱暴に晋助は撫でていた。
「まァ取りあえず少しの間黙って見てろや」
優姫の肩に手を回すと晋助は歩き出す。
「もう行くの?」
「あァ」
晋助がそう一言言うと優姫は笑顔で桂に向かって手を振るのだった。
「桂にーちゃんまたね」
手を振るとすぐに晋助の方を見て優姫は嬉しそうに微笑んでいた。そんな姿を見て桂は小さく漏らすのだった。
「……その無邪気さがあまりにも残酷過ぎるな……。何も知らずに利用されていて……」
出来る事なら晋助の元から連れ出し、銀時の所にでも匿ってやりたいと桂は思った。取りあえず近い内に銀時の元に相談しに行った方が良いと桂は思った。
「次は何時来てくれるの?」
屯所裏口まで送ってもらい優姫はへにゃっと笑顔で尋ねるのだった。
「まァ気が向いたらだな」
「……そっか………」
晋助の返事に寂しそうに答える優姫を見て思った事を晋助は口にした。
「なんか遭ったか?」
「う?何も無いよ ?? 」
首を傾げた優姫はいつもの状態に戻っていて晋助は黙って見下ろした。じーっと見つめている優姫の頭を優しく撫でてやると晋助は屯所を去って行った。
「いっぱい遊んだね、シン」
足下にいるシンに話しかけると優姫は何事も無かった様に屯所内へ戻って行くのだった。
◆
「あの……土方さん」
夜遅く、優姫とシンが寝付き一息ついていると静かに襖が開いた。
「ん?なんだお菊さん、どうしたんだこんな時間に」
自分の着物の裾を掴んで気持ちよさそうに眠っている優姫の頭を撫でながら言うと、菊は何か戸惑った表情でいるのだ。
「あの………優姫ちゃんの事なんですけれど」
「コイツがどうかしたのか?」
十四郎に言われ菊は今日見た光景を思い出す。
攘夷浪士であり最も危険だと言われ指名手配されている高杉晋助。その晋助と共に歩いていた優姫。
考えられる事は一つしか無かった。
優姫は攘夷浪士である、と言う事……。