第12章 問題10 攘夷浪士
「美味しい――!」
みたらし団子を頬張りながら優姫は嬉しそうに言っていた。その隣には静かに晋助が団子を食べているのだった。
「はい、シンにもあげる――」
すっと差し出されたみたらし団子をシンはくちゃくちゃと美味しそうに食べ出した。蜜が口周りに付いてベタベタになっていたが、味が気に入ったらしく気にしていない様だ。
「真選組の奴等はどーだ?」
さりげなく晋助が尋ねると、優姫はぱたぱたと腕を動かしながら言う。
「えっとね、近藤にーちゃんはシスコンで、土方にーちゃんはマヨネーズばっかり食べててね、総悟はいつも土方にーちゃんの事ばっかり狙ってて、退にーちゃんはミントンばっかりやってるの !! 」
「ほーほーそりゃあ騒がしそうだなァ」
晋助がそう言うと優姫はにこっと微笑んで言う。
「うん、でもみんな優しいの」
へにょっと微笑んでいる優姫に高杉はもやっとするのだった。この感情を言葉で表すのならばおそらく…………嫉妬。
利用するだけの存在であった。それ以下でもそれ以上でも何でもない筈だった。
しかしまた子から言われた事から無意識にの元へ来てしまったのだ。
『真選組の局長近藤と副長土方と一番隊隊長沖田が優姫の事を溺愛しているみたいっス』
真意は分からない。実際に今日来てみれば屯所には優姫一人しかいなかったのだから。当人は真選組に非常に懐いているらしい。
まあ優姫の性格から考え懐く事など分かりきっていた事なのだが。分かっていた事なのだが、………無性に気に入らないのだ。
「お団子美味しいね――」
シンに向かってそう話しかけている優姫の声を聞き、晋助は現実に引き戻された。
相変わらず優姫は嬉しそうな表情で笑っているのだった。
「なァ……」
「なァに?」
もし今すぐに戻って来いと言ったら戻ってくるのだろうか。そんな事を思いに話しかけた瞬間、あ、と何かを指さして優姫が言った。
「ヅラにーちゃん!」
優姫の指さす方向には桂の姿があり、こちらを見てかなり驚いた表情でいる。
「優姫殿?」
「やっぱりヅラにーちゃんだ!」
そう言って嬉しそうに桂の元へ走っていく優姫の姿を見ながらその後を晋助も行く。
「よォヅラ、久しぶりじゃねーか」
「ヅラじゃない、桂だ」