第12章 問題10 攘夷浪士
「えーみんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊“春雨”の一派と思われる船が沈没した」
真顔で近藤は説明を続けていた。
「しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと奴等を壊滅させたのはたった二人の侍らしい……」
すると隣に座っていた十四郎が人に見せる事が出来ない、たるみきった隊士達の事を見て溜息をついているのだった。
「……驚くどころか誰も聞いてねーな」
隊士達はワイワイガヤガヤと騒ぎまくっていて誰一人として話を聞いていないのだ。
「トシ」
近藤がそう一言言うと慣れた様子で十四郎はバズーカーを構えて打ち放った。
ドガン
「 !? 」
会議室から物凄い音が聞こえ、シンと共に庭で遊んでいた優姫は驚いた表情で部屋の方を見るのだった。
江戸のトラブル娘
問題10 攘夷浪士
「?」
そっと襖を開けて優姫は会議室を覗き込んだ。
すると中で近藤が大事な話をしているらしいが、何故か黒こげ姿にになった隊士達が大声を出して返事をしているのだった。
「キュー」
優姫の後を追ってきたシンを見ては口元に指を当ててシー、と言った。
優姫だって子供じゃない。
どんな時に騒いで良いのか、どんな時は騒いではいけないのか、それ位はしっかりと理解出来ている。
今回の会議には自分が入ってはいけないと瞬時に理解したは自分から庭で遊ぶ、と近藤に向かって言ったのだった。
「この二人のうち一人は攘夷党の桂だという情報が入っている。まァこんな芸当ができるのは奴ぐらいしかいまい」
真剣な話の中にふと桂の名前が出てきて、優姫は以前の池田屋事件の事を思い出した。
「……ヅラにーちゃん元気なんだ」
この間は何時の間にか姿を消してしまっていた桂が無事にいると言う事を知り、優姫はそっと中を覗き続けるのだった。
近藤が中で難しい話をたくさんしていて優姫にはさっぱりであったのだが、取りあえず分かった事は今日みんなが仕事で出かけて行ってしまうと言う事だ。
優姫はしゃがみ込んで足下にいるシンの頭を撫でながら寂しそうな声で言った。
「今日もお留守番みたいだよ」
「キュー」
頭を撫でられ、シンは嬉しそうに鳴くのだった。
「今日はね幕府の高官の人の護衛に行かないといけないから優姫ちゃんはお留守番しててね」