第4章 問題2 煙草よりもチュッパチャップス食べて
「日直……どうしようかなぁ……」
優姫は真っ逆さまに落ちながら、未だ日直の事を考えていた。
江戸のトラブル娘
問題2 煙草よりもチュッパチャップス食べて
「はぁ…………日直」
サボったら先生にも貴史にも怒られてしまう。下手したら明日もまた日直になってしまうかもしれない。
優姫はそんな事ばかりを気にして落ちているのだ。
黒いのに飲み込まれた次の瞬間、優姫はお空の高い所にいた。
人間である優姫が空を飛べる筈がなく、重力に従いこうして地面に向かって真っ逆さまに落ちているのだった。
「おじいちゃーん、おばーちゃーん!日直サボっちゃったよ」
すっかり綺麗さっぱり記憶から忘れていた日直だったのだが、思い出してしまったからにはしっかりと仕事をやりたかったらしく、優姫は未だに日直の事を考えているのだ。
「あ、そろそろ地面だ」
段々と地面が近づいてきたにも関わらず、優姫は焦る事なくのんびりと言った。
死んでしまう、と言う危機感よりも日直をサボって怒られてしまうと言う方が優姫にとって重要らしく、墜落後の事は全く考えてないようだ。
「チュッパチャップス落とさない様にしないと」
優姫はぎゅっと袋を握りしめて墜落した。
「ぐぁっ !? 」
ドーン、と言うけたたましい音と一緒に誰かが悶え苦しむ声が聞こえる。
「……あれ――?あんまり痛くない」
あれだけの高さから墜落したにもかかわらず、思った以上に痛みを感じず、優姫は不思議そうに目を開けた。
其処は小さな雑木林の様で、木の枝が墜落の衝撃を和らげるクッションになったらしい。と、言っても地面に墜落したときに全く痛く無かったに近かった。
「ん――地面が柔らかい ?? 」
自分の真下の地面を押してみるとふにっと柔らかく暖かかった。
と、次の瞬間。
「誰だテメェ」
と、同時にいきなり目の前に刃物が出てきたのだった。優姫はその刃物をじーっと見てから顔を上げた。
そこには顔に包帯を巻いている目つきの恐い青年がいた。
「…………」
青年と刃物を見合わせてから優姫は叫んで言うのだった。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!地面から人が出てきたァァァァ― !! 」
「誰が出てくるか!テメェが人の上に乗ってきたんだろうがァ― !」
ぐわっと怒鳴って言われ、優姫は少し考えてから言う。