第9章 問題7 おにーちゃんはゴリラ、おねーちゃんもゴリラ
「……そ―いやあのゴリラ……優姫の兄ちゃんじゃん」
ぐったりと倒れた銀時から離れつつ神楽と新八は言う。
「もう帰る。二度と私の前に現れないで」
「しばらく休暇もらいます」
銀時はふらふらになりながら立ち上がって言った。
「なんでこんなに惨めな気分?優姫ちゃんには嫌われちゃうしさァ~」
銀時は未だに近藤の事を呼んでいる優姫の事を見た。
「近藤に―ちゃん」
ぺしぺしと頬を叩いてみるモノも一向に目を醒ます気配が無く、困っている姿を見てちょっとやりすぎたなぁ…と銀時は反省してその場を去るのだった。
◆
「オイオイ何の騒ぎだ?」
見回りをしていると橋の下を見て騒いでいる人が大勢いて、十四郎は声を掛けた。
「エエ、女取り合って決闘らしいでさァ」
「女だァ?」
十四郎は呆れながら橋の下を覗き込み、見覚えのある姿にぼろっと煙草を口から落とした。
「優姫―――― !? 」
「う?」
聞き覚えのある声に顔を上げると其処にはいつもに増して瞳孔を開いている十四郎がいた。
「あ、土方に―ちゃん」
しゅん、と困った表情で見上げてきた優姫の元に駆け寄ってきて慌てて尋ねる。
「オイ何が遭った……って近藤局長…………」
優姫の向こうで気を失っている近藤を見て十四郎は呆れ顔になってしまった。
「何が遭ったんだよ」
「えっとね、ゴリラ戦争」
「はぁ !? 」
目を見開く十四郎に優姫は説明をした。
「お妙さん綺麗だけど怒るとゴリラになっちゃってね、それでゴリラ言われまくってる近藤に―ちゃん決闘したけど負けちゃってね」
「いやいやいや、全然わからねェから」
手を振って言いながら取りあえず近藤の事を担いで十四郎は言う。
「とにかく屯所に戻るぞ」
「うん」
優姫は未だ目を醒ます気配の無い近藤の事を心配しながら屯所へ戻って行くのだった。
(2006,8,29 飛原櫻)