第7章 問題5 テロリストはヅラ
優姫はすくっと立ち上がると今着せてもらった着物を改めて見るのだった。
地味過ぎず派手過ぎない着物。裾丈は膝上であり、洋服で言えばミニスカートに当たるだろう。
ピンク基準の可愛らしい着物だった。
「おっるすばんおっるすばん!」
満足そうな表情で優姫は縁側に戻ったのだった。
「むぅ…………」
数十分後やはり暇で仕方ない優姫は急いでスニーカーを持ってきて履くとびしっと言った。
「暇だし屯所内をお散歩しよう!」
◆
「誰かいますかァ~~?」
優姫は縁側の下を覗き込みながらそう独り言を言っていた。
広い屯所だとは言え、やはり見る所など少なく進んでは縁側の下を覗き込む。また進んでは覗き込む、と言う行動を優姫は何度も繰り返していた。
「やっぱり暇~~~」
ぷぅっと頬を膨らませて顔を上げた時、いつも閉まっている筈の裏門が微かに開いていて優姫は嬉しそうな表情で駆け寄った。
「わ~~~~此処開いてるの初めて見た~~」
ひょこっと門から顔を出して外を覗き見た。
裏道らしく人はほとんどいないが、裏道から大通りへ通じているらしく優姫はソワソワして言った。
「出たいなァ……でも近藤に―ちゃん帰ってきたらお菊さんお話してくれるって言ったし……むぅ――」
外に出たい、と出てはいけない、と言う事実に優姫が困っていると見覚えのある姿が目に入ったのだった。
「近藤に―ちゃん!」
パァッと優姫は顔を輝かせて呼んだ。
しかし近藤はこそこそと動いていて何かを確認すると、すっと角を曲がって姿が見えなくなってしまう。
「う――う――――」
優姫は頭を抱えて考えると急いで縁側に戻ってカバンを肩に掛けて言うのだった。
「優姫大佐行きますっ!目標はこそこそしてる近藤に―ちゃんです!」
優姫は裏門を出ると近藤のいた方向へ急いで走って行くのだった。
◆
「……此処……何処?」
優姫は広い通りにぽつ―んと立って呟いた。
「近藤に―ちゃん何処行っちゃったのかな……」
きょろきょろと近藤の姿を探していると後ろの方から話し声が聞こえた。
「大使館……これ戌威星の大使館ですよ」
「嫌なトコ来ちゃったなオイ」
聞き覚えのある声に振り返った優姫は嬉しそうな表情になって言うのだった。
「前に道教えてくれたおに―ちゃん!」