第6章 問題4 江戸って京都?
肩車をしてもらって上機嫌で喜んでいる優姫の事を見て十四郎はぼそっと呟いた。
「……あいつ何で名字隠すんだ……」
不自然な優姫の行動に不審がるのと同時にガツン、と言うどでかい音が鳴った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁデコ割れるゥゥゥゥゥ !! 」
調子に乗って肩車でそこら中を走り回っていたら案の定、優姫はドアの上に額をぶつけたらしい。
「ギャアァァァァァァ優姫ちゃん!今に―ちゃんが助けてやるからなァァァァ !! 」
わたわたと慌てふためく近藤をよそに、十四郎は床でのたうち回っている優姫の事をひょいっと抱き上げて言った。
「調子に乗って走り回るからだろうが」
額を抑えている手をどかして見てやると赤くなっていた。
「あーあー、赤くなってやがる。仕方ねえ、冷やしに行くか」
「痛いィィィィ」
きゅう、と小さく縮こまっている優姫の事を宥めながら言った。
「おうおう分かったつ―の」
「優姫ちゃァァァァァァァん!」
床に倒れて手を差し伸べている近藤を見て十四郎は呆れながら総悟に言った。
「取りあえず塗れ布巾でももらいに行くから、テメェここの片付けと近藤さんど―にかしてろ」
「嫌ですさァ。替われ」
即答した総悟に十四郎は大きな溜息をついた。
「やれ」
◆
「ほれ手ェどけろ」
十四郎は自室の布団に優姫を転がしておくと濡れ布巾を持ってきて言った。
「い―た―い―」
額を抑えたままコロコロと転がっている優姫に大きな溜息を漏らしながら、捕獲して膝の上に座らせてもう一度言った。
「どけろ」
「う゛~~~~」
諦めたのか額からやっと手をどかした優姫に呆れつつも、濡れ布巾を当てて冷やしてやった。
「気持ち良い~~」
額にくる冷たい感覚に暴れていた優姫がやっと大人しくなり十四郎はホッとする。
余程気持ち良いのか優姫は目を閉じたまま、十四郎の着物の裾を軽く掴んでいる。そんな優姫の姿を見て十四郎は無意識に身体が動いてしまった。
一瞬だけの行為だったが目を閉じている優姫の瞼の上にそっと口づけをした。
「う?」
目を閉じていたので何があったのか分からなかったが、一瞬何かが触れてきた事だけは分かり、不思議に思って目を開けた。
其処には口元を押さえて耳まで真っ赤にしている十四郎がいた。
「土方に―ちゃ……」