第6章 問題4 江戸って京都?
尻尾でも生えていれば引きちぎれんばかりに振っていそうな優姫の反応を見て、十四郎は勝ち誇った顔で総悟の事を見た。
総悟はその視線にすぐ気付き、ムッとしながら優姫に話しかけてみた。
「優姫、んなモノ食ったらァ腹壊しますぜェ」
「大丈夫、一口だけだから」
にっこりと何も知らずに笑顔を向け、総悟はその笑顔にノックアウトした。
「総悟―?」
変な動きばっかりしている総悟の事を呼ぶと、ずぃっと目の前にどんぶりと箸が出てくるのだった。
「ほれ、一口だけだからな」
ひょい、っと箸でご飯を取ると十四郎は当たり前の様に優姫の口元に持っていった。
「は―い」
優姫の方も全く気にする事もなく、出された物をパクっと食べる。
むぐむぐとしっかりと噛んで食べている優姫の事を後ろから覗き込む様に十四郎は尋ねた。
「どーだ、美味いか?」
「ん――」
しっかりと噛んで飲み込むとにっこりと笑顔で答えた。
「マヨネーズの味しかしなかった!」
にぱっと笑顔で見上げてきた優姫に十四郎も悶えた。
(あ――やべっ…………無茶苦茶可愛いし)
十四郎も総悟も悶え震えていて優姫はきょろきょろと見合わせて首を傾げながら言った。
「変なの」
◆
どんちゃん騒ぎも落ち着き、そこら中に隊士が寝ている中、近藤が優姫の所へやって来きた。
「そー言えばさぁ、優姫ちゃん」
「なーに?」
どかっと座ってきた近藤の方へ優姫は目線を移す。
十四郎と総悟と言えば未だに悶えてたり火花を散らしていたりと、優姫は見ていてもよく分からないと判断したのだ。
「優姫ちゃんの名前は聞いたけどさ、名字は聞いてなかったよな?」
名字、と言われた瞬間ぴくっと反応をした優姫に総悟を睨み付けていた十四郎が話しかけてきた。
「ど―かしたか?」
一瞬だけ暗い顔をしたのだがすぐにいつもの笑顔に戻った優姫はにぱっと答える。
「じゃあ今日から近藤優姫って名乗る――。近藤に―ちゃん」
「に――ちゃん大歓迎―――― !!」
優姫の事を抱き上げてくるくると近藤は回った。
「なんですかァ、アレ」
くるくると回転しながら二人の世界へ旅立っている近藤と優姫を見て総悟は尋ねる。
「知らねぇよ。優姫の奴今日から近藤姓名乗るんだってよ」
「へ――もう完全に兄妹になってますぜェ」