第5章 問題3 コレステロールって気にしないの?
額に手を当てて呆れる十四郎を他所に優姫は部屋を漁っている。そんな純粋な優姫の姿を見て十四郎は思うのだった。
(やっぱり攘夷のスパイって考え間違ってやがるのか…………)
どこからどう見てもただの少女にしか見えない優姫。膝の上に乗せた時に分かったが、とてもじゃ無いが戦える肉体では無い。
(やっぱり俺の考えすぎ……か……)
「あれぇ?」
優姫は押入の中からずぼっと何かを取り出すと尋ねてみた。
「これなーに?」
優姫の手にはマヨネーズの空容器が握られていた。
「ああ、マヨネーズの空」
「マヨネーズ?」
優姫は空入れをじーっと見てから言った。
「土方にーちゃんマヨネーズ好きなの?」
「おお、好きだ」
優姫の隣にどかっとあぐらをかいて座ってから手振り身振りで説明する。
「土方スペシャルつーのが最高に美味い。今度お前にも食わせてやるよ」
誰になんて言っても絶対に首を縦に振られる事がない、マヨネーズたくさんの土方スペシャルを勧めてみると優姫はぱぁっと笑顔になって言った。
「うん!食べる !! 」
その完全に純粋で期待に満ちあふれている優姫の目を見て十四郎はぼ、っと顔を赤くしてしまった。
「土方にーちゃん?」
不思議そうに見上げてくる優姫を見て、益々顔を赤くしながら十四郎は言うのだった。
「ほほほほれいつまで座ってるんだ!晩飯の時間も近ェしさっさと行くぞ !! 」
ずかずかと歩いていく十四郎を見て優姫は急いで立ち上がりながら言った。
「土方にーちゃん待って――」
優姫は手に持っていた空入れを見てふと思うのだった。
(一回にこんなに使ってコレステロール気にした事ないのかなぁ……)
「おいてくぞ !! 」
「う、うんっ!」
コレステロールの事を気にしつつも優姫は急いで後を追う。
(こんなガキに惚れるなんて馬鹿な事ある訳ねェよ!)
十四郎は耳まで真っ赤にして先を歩いているのだった。
(2006,8,14 飛原櫻)