第5章 問題3 コレステロールって気にしないの?
総悟がそう言うのと同時に木が倒れズドーン、と騒音が鳴り響いた。土煙が収まってきたのを確認すると総悟は何事も無かった様に言ってきた。
「土方さーん、生きていますかィ?」
自分でやったにも関わらず、他人事の様に総悟が言うと怒鳴り声が聞こえた。
「総悟てめえェェェェェェ !! 人を殺す気か!」
「何言ってるんですかィ土方さん。俺が殺したいのは土方さんだけですぜィ」
と、答えた所、総悟は目を丸くして見た。
自分が殺そうとした相手の腕の中にすっぽりと、少女が収まっているのだ。
「は?」
「お前何かとすぐにブっぱなしやがって何やって……」
「お前等何やってるんだァァァァァ !!」
怒鳴り声と同時にげんこつが二つ降ってきた。
「「 い゛っ !! 」」
ゴン、と大きな音が響くのと同時に男性は言った。
「屯所壊すなこの野郎ゥゥゥゥ!」
「ふは――びっくりした」
「……は?」
いきなり聞こえてきた愛らしい少女の声に男性は二発目のげんこつを落とそうとしていたのだが、ぴたっと止まった。
「急に木が倒れちゃうんだもん、びっくりー」
優姫はふと顔を上げて言うのだった。
「あ、こんにちは」
◆
「へえ優姫ちゃんて言うんだ」
「うん、近藤おにーちゃん此処で一番偉い人なんだね」
「おにい……」
にっこりと笑顔で言った優姫の一言に近藤はじーんと心に染みていた。
「近藤さん周りからゴリラ言われまくってるもんでェ、お兄ちゃんなんて言われて物凄くゥ喜んでる」
天から天使が降っているいるのか近藤は一人幸福に満ちあふれた表情でいる。
「近藤さん何へらへら話してるんだ。女子供だろうが真選組屯所にやすやすと民間人入れやがって」
「トシィィィィィ!優姫ちゃんは良い子だぞぉ!」
ぎゅ―っと優姫を抱きしめる近藤を見て、土方に呆れ顔をされるのだった。
(…………この人……えっと土方十四郎にーちゃんだけ凄い警戒してる?)
ぴりぴりとした張りつめた視線を向けてくる十四郎を見て優姫はそう思った。
「近藤さん偉く気に入ったみたいですねェ」
「総悟、俺は今までゴリラゴリラ言われまくって来たけど『おに―ちゃん』なんて愛らしい声で呼ばれたの始めてだっ」