第23章 問題21 独占欲
「御用改めだ!」
ザッとあばら屋の前に辿り着いた十四郎達が怒鳴り言うと、すっと浪士達が姿を見せた。
戦闘態勢を整えている浪士達に皆武器を構えつつ言った。
「此処に女の子が来た筈だ。今すぐ出せ」
するとすっと前に出た武市が無表情のまま答える。
「それは出来ない申し出ですね。彼女は私達の大切な仲間ですから」
後から出てきたまた子も続けて言う。
「晋助様の邪魔はさせないっス !! 」
「ならば…………力ずくで連れて帰させてもらう !!!! 」
江戸のトラブル娘
第21話 独占欲
「優姫……お前を迎えに来た、帰るぞ」
その一言に優姫は戸惑いを隠せずにいた。
「帰るって…………何処に?」
「京だ」
はっきりと言い切った晋助に優姫は困惑を隠せない表情でいた。
京とは江戸から遠く離れている場所だと言う事を以前桂から聞いた事があった。『京女』が何か気になって尋ねた時に一緒に教えてもらったのだ。
江戸から遠く離れている場所。其処へ帰る。
つまり、江戸から去る、と言う事を意味しているのだった。
「江戸……と、さようなら?」
小さな声で、不安一杯の声色で尋ねれば晋助はしっかりと頷いた。
それは屯所に住まう十四郎達を始めとして万事屋の銀時達、桂やお登勢達と離れる事。晋助の事を拒む理由は優姫には存在しない。
けど、だけれど……。
「みんな、とさようなら…………は、やだ」
優姫なりの小さな拒絶。改めて長い時間優姫を自由にさせてしまったと晋助は後悔した。
あの時は捨て駒にするつもりだった優姫に愛着が沸き、独占欲が生まれた。
江戸に住む人々に囲まれて幸福に過ごしていた優姫が自分から離れる事は目に見えていた。優姫の事を本当に想うのであれば、優姫の自由を選ばせてやるのが最善。
しかし頭で分かっていても心が理解しようとしなかった。連れて帰りたい、と言う気持ちが大きすぎたのだ。
「ヤダ…………嫌だ」
小さく後ずさった優姫にシンは心配そうに見上げていて、時々晋助の方を見てきていて。
優姫一番のシンなのだが、晋助の事を好いていた優姫の姿も見ている。だから優姫の変化に戸惑っているのだ。
オドオドとしているシンを優姫は泣き出しそうな表情で見ていて、晋助は思った。