第22章 問題20 真実
「今はそんな言い合いしている場合じゃないでしょう!早くしないと優姫ちゃん連れて行かれちゃうんですよ !! 」
晋助の元へ走り去ってしまった優姫の後を追って皆は走っていた。大事にならない様に、と必要最低限のメンバーで。
「優姫ちゃん無事だと良いのだけれど……」
心配そうにぼそっと言った近藤に銀時は小声で答えた。
「アイツが優姫に危害加える訳ねーだろうが」
晋助が優姫の事を特別扱いしていた事は銀時だってすぐに分かった。あの性格の晋助が側に置いているのだから。
「ちゃっちゃと俺達のお姫様見つけて帰るぞ」
そう銀時が言い、皆頷いた。
◆
「………………晋助……」
やっと一番上の部屋に着いた優姫は不安げな表情で中へ入った。
物静かに佇んでいる晋助の側に寄りながら、優姫は不安の原因である事を素直に言った。
「……ねェ、晋助。晋助は嘘、ついてたの?」
その声にゆっくりと振り返った晋助は一切表情を変えずに答えた。
「どうやらこの国の事をしっかりと知ったみたいだなァ」
その一言に泣きそうな表情になった優姫を見て晋助は言い加えた。
「だけど俺は嘘を付いてなんかいねェよ」
「?」
言っている意味が分からず、首を傾げると騒がしくなり出した外の方を見つつ言い切った。
「今のこの国で正しい奴正しくない奴を決めつけてるのは、天人の野郎共だ。俺から見れば天人が悪者である事は真実だ」
真選組の姿を確認すると晋助はしっかりと優姫と向き合った。
その表情は初めて会った時と何も変わらない……筈だった。
「優姫……お前を迎えに来た、帰るぞ」
最初に会った時の様な何処か冷たい表情は、綺麗に消え去っていたのだった。
(2007,11,4 飛原櫻)