第22章 問題20 真実
心配そうな声色で鳴いたシンを見て、にこっと笑顔を作って優姫は言った。
「大丈夫だよ、行こう」
ギシギシと軋む音を鳴らす建物に優姫は再び足を踏み入れた。
「晋助。優姫殿が戻ってきたでござるよ」
窓の外を見ながら煙管をふかしていた晋助に万斉がそう伝えると、ゆっくりと首を動かせながら晋助は言った。
「向かえに行ってやれ。丁重に扱い幕府の犬達が来たら切り捨てろ」
◆
「…………」
あの時と一切変わらない室内だったが、人一人いなく優姫は不安げに歩いていた。
今日はみんな出かけてしまっているのだろうか、それもとこの建物が古すぎて引っ越してしまったのだろうか。
心配で不安でいっぱいの心を落ち着かせながら、一歩一歩確実に前へ進んでいた。
「優姫殿」
「 !! 」
名前を呼ばれ振り返ると其処には顔見知りではない万斉の姿が在った。
「……おにーちゃん誰?」
不安げに尋ねてくる優姫の元まで行き、膝を付き目線を合わせて万斉は答えた。
「拙者の名前は河上万斉でござる。晋助から言いつけられて、優姫殿を向かえに来たでござるよ」
「……晋助此処にいる?」
ぎゅっと服を掴みながら尋ねると万斉はしっかりと頷き、先程自分が降りてきた階段を指さした。
「この建物の一番上の部屋で晋助が待っているでござる。拙者も後から向かうから先に行くでござる」
そっと背中を押され、不安げな表情をしつつも晋助がいると信じて階段の方へ歩いていった。階段を上って行ったのを確認すると万斉はすぐに言う。
「今から真選組の奴等が優姫殿を奪い返しに来るでござる。晋助が『幕府の犬達が来たら切り捨てろ』と言う話でござるよ」
その声に答えるかの様に今まで誰もいなかった部屋に、次々と攘夷浪士達が集まりだした。もちろんその中にまた子の姿も在る。
不服そうな表情をしつつも晋助の命令であるのならば必ず答えよう、と。外の方が段々と騒がしくなっているのを感じ、皆武器を構えた。
◆
「何ですぐに言わなかったんだ!」
「言える事と言えない事がある事くらいすぐに察しろ!このマヨネーズ馬鹿 !! 」
先頭でぎゃーぎゃーと言い合いしながら走っている銀時と、十四郎に後を走っている新八は怒鳴った。