第21章 問題19 攘夷祭り~後編~
『ただ』の『普通』の女の子、だった。
「……分からないよ」
ぎゅっと力強く着物を握りしめている優姫は涙目でいた。
「だって……晋助そんな事言ってないもん…………。じょーいは江戸の町守る正義の味方だって…………」
その言葉に源外は動かしていた手を止めた。
「嬢ちゃんもしかしてオメー……騙されてたのか……」
それならば優姫が攘夷浪士であると言う事に関する矛盾が納得出来る。純粋な性格だったからこそ、騙されていたのだと……。
「おうおう、随分と物騒な見せもんやってんじゃねーか」
ぽん、と優姫の頭を撫でつつ前に出てはっきりと言った。
「ヒーローショーか何かか?俺にヒーロー役やらせてくれよ」
「銀にーちゃ……」
「テメーじゃ役不足だ、どけ」
今にも泣き出しそうな優姫の姿を確認して銀時は言った。
「しょうもねー脚本書きやがって、役者にケチつけられた義理かテメー。今時敵討ちなんざはやらねーんだよ」
ぎゅっと腰元にしがみついてきた優姫の背中を優しく叩きつつ言ってやる。
「更にウチの可愛い姫さんまでたぶらかしてくれたみてーじゃねーか。三郎も泣くぜ」
「どっちの三郎だ」
「どっちもさ」
はっきりと言うと源外は落ち着いた声色で言う。
「……分かってるさ。だがもう苦しくて仕方ねーんだよ。息子、あんな目に遭わされて、老いぼれ一人のうのうと生き残ってる事が。戻らねーモンばっかり眺めて生きていくのは、もう疲れた」
溜息混じりに源外は言い続けていた。
頭で理解はしていても心が納得していないようだった。
「どかねェ。俺にも通さなきゃならねー筋ってモンがある。優姫泣かした罪は重いと思えよ」
そう言われ、ぴったり銀時にしがみついている優姫を見て源外は言う。
「オメーもアイツも余程その嬢ちゃんが大事らしいな。嬢ちゃんの事連れ戻しに来たって言う話だぞ」
「な……」
「?」
新八には何を言っているのか分からなかったが銀時にははっきりと分かっていた。アイツとは高杉。連れ戻しに来たと言う事は屯所から優姫が居なくなる。
「……アイツ……最初からそのつもりだったのかよ……」
「その嬢ちゃんには傷一つ付けるな、って言われていてな。三郎の攻撃受ける前に退け」
「新八!」
急に呼ばれて新八は慌てて答えた。