第20章 問題18 攘夷祭り~前編~1
久しぶりに江戸の町に姿を現した晋助は高台からまっすぐ屯所を見下ろしていた。
「晋助」
すっと姿を見せた男性、川上万斉に晋助は振り返る事なく言った。
「予定通りに行くぞ」
「承知した」
すっと気配が消えたのを確認してぼそっと呟く。
「優姫を連れ戻す」
江戸のトラブル娘
問題18 攘夷祭り~前編~
「鎖国解禁二十周年の祭典?」
近藤に言われて首を傾げると隣に座っていた十四郎が言う。
「分かりやすく言えば単なる祭だ」
『祭』の一言に優姫は目を輝かせて言った。
「お祭り行きたい―――!焼きそば!綿飴!」
食べ物の単語を聞き、何か食べられるのかとシンもバッと起きあがって尾を大きく振っている。この二人の事だから行きたいと言うに決まっているだろう、と三人は再確認した。
「本当なら連れて行ってあげたいんだけどなァ……大事な仕事入っちゃったんだよ」
腕を組んで言った近藤に優姫はエー、っと声を上げた。
「将軍様の護衛なんですさァ」
懐かしい名を聞き、優姫は手を挙げ言う。
「将軍様に会いたい――!そよ姫様にも会いたい――!」
「うん、将軍様もそよ姫様もそう仰っていたのだけどな、公の場だから会う事は出来ないんだよ」
近藤がそう言ったので優姫はシュンとした。身分的に会う事が難しい事くらいなら優姫にも分かっているから。
「でもお祭りは行きたいなァ……」
将軍とそよに会う事は百歩譲って諦めるとしても祭りは別件だ。
お祭りなんか滅多にあるモノじゃない。出店も沢山出ているのだろう。子供である優姫にとってお祭りほど魅力的なイベントは無い。
「だよねェ……そうなるとやっぱり万事屋の奴等に頼むしかないかなァ」
銀時達の事を出された瞬間、十四郎はひなって言う。
「アイツ等だけは絶対に駄目だ !! 」
「またそうやって対抗心むき出しにして」
十四郎の銀時嫌いは理解しているつもりだが、本当に酷い。特に優姫関連の事となると一層十四郎は五月蠅くなるのだ。
「でも他に適任者はいませんですぜィ?俺達が連れ回す事なんかしたら切腹モノですぜィ?」
お茶をすすりつつ言う総悟に十四郎は声をつまらせた。
銀時は気に入らない存在だが、優姫を預ける事に関しては認めたくは無いが適任だ。