第19章 問題17 下着イリュージョン
にっこにことしている優姫に対して山崎は困った表情で尋ねてみた。
「え?優姫ちゃんも下着泥棒に遭っちゃったの?」
「分からない――。でもパンツ見つからなかったの」
十四郎が居なくなってしまった理由が分かって山崎は呆れてしまうのだった。
◆
「ただいま――!」
大量の買い物の荷物、主にマヨネーズなのだがそれを抱えて優姫は笑顔で屯所へ戻ってきた。
「今帰りました」
続けて山崎が入ると菊が笑顔で出迎えてくれるのだった。屯所の静けさを考えると十四郎達は戻って来ていないようだ。
「そう言えば局長もまだ帰ってきてないの。みんな遅くまで何処に行ってるのかしら?」
今日は遅番になる様な仕事は入っていないし、そもそも非番である近藤が遅くなる理由が無い。何処で道草を食っているのだろう、と山崎は思いつつ優姫の持っている荷物も預かって言った。
「まぁほおっておけばその内帰ってくるかもしれない人達ですから、どんどん晩ご飯にしましょうか」
「そうね。気にした所何処に行ったか見当も付かないもの」
天下の真選組が夕飯の時間を守れないなんて情けない、と菊は呟きながら台所へ去っていった。その後を荷物を持って山崎が着いていく。
残された優姫は足下にいるシンを見てにぱっと笑った。
「今日の晩ご飯なんだろうね――」
「キュー」
夜遅く、ボロボロに焦げている近藤達が帰ってきた。
その手には紙袋が一つ握られていた。
◆
「あ――、パンツが帰ってきた――!」
次の日洗濯物を畳んでいた優姫は昨日行方不明となっていた下着が戻ってきて、嬉しそうな表情をしていた。
「そう言えば捕まったらしいわね、ふんどし仮面」
「これでもう下着泥棒に困らなくて良いわ――」
口々に安心した、と言う女中達の事を見てから優姫は再び自身の下着を見た。
「お帰り――」
どういう経緯で下着が戻ってきたのか優姫は全く知らずにいるのだった。
「そう言えば近藤にーちゃん達まだ寝てるの――?」
首を傾げ言うと女中は手を横に振りながら答えた。
「寝てるんじゃなくて倒れてるの。昨日ボロボロになって帰ってきて本当に何していたのかしら」
一日中ぐったりと寝込んでいる近藤達が、ほぼ自爆の形でボロボロになったとは誰も思いもしないのだった。
(2007,9,7 飛原櫻)