第19章 問題17 下着イリュージョン
「あら、さっき副長達帰って来てなかった?」
掃除を終わらせて戻って来た菊に洗濯物を片付けつつ優姫は答えた。
「えっとね、帰って来たけど形相で出かけて行っちゃったの――」
「そうなの?お買い物頼もうかと思ってたのに……」
困った様に言う菊に優姫はぴょんぴょんと跳ねて言う。
「私行って来る――!」
「一人で大丈夫?」
「大丈夫――」
びしっと親指を立てる優姫の姿を見て、菊はやはり心配になってしまった。もう夕方だし今から買いに出かけたら、帰りには日が落ちてしまっている。
シンが居るとは言えども、優姫の性格を考えるとどうも心配になってしまうのだ。
「どうかしましたか?」
丁度通り掛かった山崎が声を掛けてきたので菊は笑顔で言った。
「退君丁度良いところに。今から優姫ちゃんにお使い頼もうと思ってるのだけれど、一緒に行ってあげてくれないかしら?」
そう言われ、夕焼けに染まっている空を見て菊が心配した理由を察した山崎は笑顔で頷いた。
「俺でよければ。優姫ちゃん一緒に行こう」
「退にーちゃんとお買い物――!」
嬉しそうに手を挙げて言う優姫に二人は笑顔で見合った。
「それじゃあ紙に買ってきて欲しい物全部書いてあるからお願いね」
「らじゃー!」
しゅびっと敬礼する姿を微笑ましく見つつ菊は笑顔で見送ってくれた。買い物のメモ帳を確認している山崎は笑顔で言った。
「またマヨネーズ沢山あるよ。副長凄いマヨネーズ食べるからすぐに無くなっちゃうね」
「マヨラーマヨラー」
「キューキュー」
優姫の後に復唱しているかの様にシンが鳴いたので相変わらず微笑ましいなぁ、と思ってから山崎は屯所を歩いていた理由を思い出した。
そう言えば十四郎の事を探していたのだ。
巡回から戻ってきている時間だから会える筈だったのだが全く姿が見えず、屯所内を歩き回っていたのだ。
「そうだ、優姫ちゃん副長何処に行ったか知らない?」
本来なら聞く相手が違うのだがある意味誰よりも隊士達の動向を優姫は知っていた。皆出かける度に優姫に声を掛けていくからだ。
「土方にーちゃん?」
首を傾げつつ尋ねてくる優姫に対して頷くと笑顔で答えたのだった。
「えっとね、洗濯物から私のパンツ無くなってるって言ったらいなくなっちゃった」