第13章 魅惑の香【🦾主 ← 🫖 & 🌹 ✉*】
『私が好きなのは彼だけだよ』。そう告げようとした時。
「っ………!?」
部屋に立ち込める芳香に、くらりとふらついた身体。
「(な、に……これ………。)」
その身体を支え、アモンが囁く。
「身体、熱くなってきたっすよね」
次第に霞がかっていく視界のなか、耳をかすめた声。
「この花……なんて花だったか覚えてますよね」
サイドテーブルに飾られた花。頷くと、その唇が儚い弧を描く。
「マリーニュラはその甘い香りに、軽い催淫効果があるのです」
「貴女にふれたい」
「!」
「抱かれてくださいっす」
みひらく瞳。囚われた時のまま、澄んだ色彩の青玉。
「ぼ……んんっ」
名を呼ぶ声は、覆われた唇によって消え去る。
「いまだけは……オレ達だけをみてください」
合わせをひらかれ、ふるりと豊かな胸がゆれる。
「やっ……みないでっ」
慌てて隠そうとした手首は、いとも容易く封じられ。
きつく瞼を閉じていても、
むき出しの肌のラインをふたりぶんの熱い視線がたどっていくのがわかる。
「隠さないでいいじゃないですか。………こんなに綺麗なのに」
きつく唇をかんでいると、白魚のような指先が、彼女の唇をなぞる。
「噛んではいけませんよ。傷がついてしまいますから」
「……ひぅっ!」
闇から伸びてきた手が胸を包む。
そのまま思いのままに掌を動かすと、豊かな胸は面白いように形を変えた。
「はは……凄い、柔らかい………。ずっとふれてみたかったすよ」
「あ、もん………っ」
恥ずかしさにその両目が滲む。
谷間に顔を埋められ、さらさらとした髪が肌を滑る感触にとまどった。
「アモンくんにばかり、そのような顔をみせないでください」
わずかな棘を滲ませて、強引に唇が重なる。
それがベリアンの唇だと理解する頃には、舌をからめ合う淫らな口付けと化していた。