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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第13章 魅惑の香【🦾主 ← 🫖 & 🌹 ✉*】


「どうして拒むんだよ。まさかアモンとなにか遭ったのか」

見下ろす瞳には、静かな憤りが見え隠れしていた。

慌てて胸元を正す彼女をじっとみつめる。



「ち、ちが………っ」

その手をつかみ、強いて引き下ろす。

己の手がたやすく一周する手首は、折れそうに儚くて。



「なら良いじゃねえか」

にやりと微笑った彼が、リボンを咥えてしゅる……と器用に解いた。



ちゅ、ちゅる……と花びらを散らされ、みずからの内で快楽が響きはじめて。



「ぼす、き……話を聞いて………!」
拒絶を封じるように、ふたたび唇が重なった。



(こんな風に触れられるなら………、)
意を決して、その舌に歯を立てた。



「くっ……!」

思わず唇を離した彼。直後、ぱん、と乾いた音が響いた。

張られた頬を押さえ、その瞳をみひらく。



「離れなさい、ボスキ・アリーナス」
彼女の瞳には、雫が光っていた。



「………………。」



「離れて!!」
のしかかっていた身体を離すと、彼女は胸元をかき合わせた。



「ヴァリス……!」
逃げるように出ていく。伸ばした手は、彼女に触れることなく。



否、触れられなかったのだ。

滲む瞳が、頬を伝う雫が、自分を拒むようで………。



「っ………!」

ひとり残された部屋で、壁に拳を打ちつける。

内で渦巻く、自責の念を持て余しながら。
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