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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第13章 魅惑の香【🦾主 ← 🫖 & 🌹 ✉*】


彼女の部屋へと入ったボスキは、彼女を抱きしめた。

ぎゅ、と痛みを感じるほどに、きつくきつく。



「ボス、キ……?」
おずおずと、彼女が包み込んでいる腕に手を重ねる。



「アモンとなにを話してたんだ」



「え?」

戸惑いにゆれる瞳。

腕のなかでこちらを見上げる瞳は、すこしばかり怯えていた。



「いいから、………答えてくれ」



「花を、みせようとしてくれていただけよ」



「花?」
思わず訊き返すと、「うん」とその唇が笑みを描く。



「ある人にプレゼントしたいのですって。誰に贈るかは教えてくれなかったけれど……。」

穏やかな瞳で呟くそのさまに、ボスキのなかでなにかが壊れた。



「んんっ……!」
言葉を封じ込めるように、キスを強いる。



「ぼ、………ひぅっ」
首筋に吸いつかれ、華奢な身体が跳ねる。そのまま抱き上げ、急いて寝台へと運んだ。



「ボス、キ……! 下ろしっ………きゃあっ!」
ふかふかのシーツの上に放られ、彼女が悲鳴を上げる。



「ぼすきっ……待って………!」
拒絶は彼に届かない。胸元のリボンを解かれ、再度唇が降ってきた。



「んっ……んぅ………っ」
からみ合う舌先に、その心地良さに、身体の力が抜け落ちていく。



(どうして、そんなに怒ってるの……?)
答えのない問いが、胸のなか浮かんでは消えていく。



「ヴァリス、………ヴァリス」

名を呼ぶその声音には、切なげな余韻が宿っていた。 

そのまま素肌を撫で上げられ、ぴく……と小さく跳ねる肩。



その瞳には怯えに近い感情の色が宿っていて、キスを辞めたその声が耳をかすめる。
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