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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第12章 降りし日は、貴女と。【All Characters 別邸✉】


「おーーーい、二人とも〜〜〜? 俺がいるのにいい雰囲気にならないでくれよ」

ハナマルが苦笑する。その時、叩扉の音をとらえた。



「主様、………ユーハンさんとハナマルさんもご一緒ですか」

声の主はテディだった。どうぞ、と呟くと扉がひらく。



「よかった、………この宿にいたんですね」

コツ……と長靴の踵を踏みしめて、テディが足を踏み入れる。



ぽた、ぽた、とハナマル以上に髪から身体から雫を滴らせている彼に、

風邪を引くよ、と備え付けのタオルを被せた。



わしゃわしゃと拭いていると、その指に彼のそれが重なった。



「ふふっ………、」

幸せそうにはにかむ彼に不思議そうな瞳を向ける。



「テディ……?」

その名を呼べば、微笑んだまま唇をひらいた。



「あ、………すみません。何だか……俺と主様が夫婦みたいだって思ったんです」



「!?」

染まる頬に優しく微笑ってその指が伸びてくる。

宝物を扱うように優しい手付きで、その鼻先をつついた。



「主様、………本当に可愛いなぁ」

蜂蜜を混ざりあわせたように柔らかな眼差し。照れ隠しにふい、とそっぽを向きながら呟く。



「私のこと、からかってるでしょ?」

唇を尖らせながら告げると、いえいえ、と再度指が伸びてきた。



「俺は、本気で言ってますよ」

頬の輪郭をなぞるように包み込んでくる。

その仕草の優しさに、耐えきれなくなった彼女が勢いよく顔を背けた。



「もう……! 揃いもそろって……!」

頬を染めて怒る姿に、すみません、と胸に手を当てる。



「俺……、換えのタオルを借りてきますね、」

そう言って、熱を振り切るように身を翻す。

そのさまにユーハンとハナマルが顔を見合わせた。
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