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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第10章 魔女たちの仮面☩マスケラ☩【🦾 → 主 ← 🌹】


かたかたと揺れる馬車のなか、アモンは彼女を盗み見る。

楽しそうに話すさまに、寂しさが胸に染み込んだ。



(主様……少し痩せたんじゃないっすかね)

紅をのせた唇が、言葉を紡ぐごとにひらいては閉じる。



「それで、その時ムーが………、」
ボスキと楽しそうに話すさまに、ちくりと棘が刺す。



(あの人なら大丈夫っすよ。………そうでしょう?)

ちらと彼を一瞥する。

常ならば鋭利なひかりを宿す翠玉が、彼女を映すとともに柔く解けていた。



カタン。馬車が停り、彼女は唇をかんだ。そのまま降りようとした彼女を制する。



「ある……お嬢様、私どもが先に降りますわ」
そう告げ、降り立った彼女に手を貸す。



「(ここが、女領主様のお屋敷………。)」

古風な趣きの調度品に、磨き抜かれたテーブル。

毛足の長い絨毯を踏みつけ、会場へと足音を響かせる。



室内のすべてが漆黒で統一されていた。

黒薔薇を形どった燭台で、蝋燭の仄かな灯りがゆらめく。



「参りましょう」
ふたりを従えて、受付役の女性従者に招待状をみせる。



「白樺の君、ですね。お待ちしておりました。

——どうぞ、こちらへ。まもなく主の君がおいでになりますから、」

彼女に促され、席につく。仮面をつけた貴婦人たちが、手にした扇をひらめかせていた。
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