第10章 魔女たちの仮面☩マスケラ☩【🦾 → 主 ← 🌹】
「このドレス、似合わないかな………。」
「そんな事ないっすよ。凄く綺麗です」
微笑いかけると、彼女も密やかに微笑んだ。
「ふたりも、とても似合ってるね」
心から言っているらしい一言に、彼らの顔が曇る。
「主様、褒めてくれるのは有難いが、」
「ごめんなさいっす。それは正直複雑っすよ」
「正直ね」
ふわりと微笑まれ、ますます頬が熱くなる。
「でも……本当の魔女のお茶会てどんなかしら」
彼女の瞳がゆらめく。そのさまに、ボスキは思わず手を伸ばした。
さら……と髪を撫でる。
「大丈夫だ、俺があんたを守るから。………まぁ、女装をするのは不服だが」
小声でつけ加えられた一言に、思わず笑みが零れた。
「っ……何笑ってる」
頬に熱が集うのを感じながら、彼女をみつめる。
「ううん。なんでもない」
くすくすと微笑っていると、彼は呟いた。
「あんたのそういうところ、本当にずりぃよな」
その一言は彼女にはとらえることができなかったようで、「なあに?」と見上げられた。
「なんでもねえよ」
熱をもったままの頬を持て余し、こつん、とその頭を軽く指先でつつく。
「おふたりとも、オレもいるって忘れないでくださいよ」
苦笑交じりに呟く瞳の奥に、わずかな焔。
そのひかりに気づかない彼女は、あらゆる全てを純白に染め上げる新雪のようだった。
「ご、ごめんなさい」
恥ずかしそうにはにかむ彼女に、その瞳が柔く解ける。
「主様、ふたりとも。………お時間です」
控えめに扉が叩かれ、ハウレスの声が響く。
「えぇ、いま行くわ……!」
ふわりと身を翻した彼女の手をつかむ。
「ボスキ……?」
とまどったようなおもてが、彼の瞳に映る。そのさまに、笑みを返した。
「お手をどうぞ……お嬢様」
悪戯めいた口調に、知らず微笑みに染まる唇。
「ふふ……ありがとう」
そっと、彼と掌を重ねたのだった。