第10章 魔女たちの仮面☩マスケラ☩【🦾 → 主 ← 🌹】
「ッチ……なんで俺が女装を、」
フルーレに着せられながらも、つい舌打ちが零れる。
「ボスキさん、腕上げててください、」
彼に指摘されて、不承不承といった様子で従う。
「仕方ないっすよ。
まさか主様おひとりで潜入させる訳にはいかないですし」
白銀の鬘をつけ、化粧をほどこされたアモンは、本当に美少女そのものだった。
薔薇のコサージュがついたドレスもよく似合っている。
ふたりは新たな依頼、「魔女のお茶会」への潜入の準備をしていた。
表向きは貴族家の交流の場だが、
裏では非合法な嗜好品を売り捌いるという、妖しげな会合だという。
男子禁制という奇妙な掟があるために、今回女装することになった。のだが……。
がっしりとした体型を隠すため、漆黒のロングドレスに身を包み、
紺碧の髪を結い上げたボスキは、尚もぶつぶつと愚痴る。
「アモンお前……俺が嫌がってるさまを見て楽しんでるだろ」
「オレだって不満っすよ? 女装なんてした事ないし、何より落ち着かないっす」
「ふたりとも、入っても大丈夫?」
控えめな叩扉。響いた声は主様のものだった。
「えぇ、主様。いまお開けいたしますっ」
ふたりの着替えの手伝いを終えたフルーレが扉へと近づく。
「主様……その格好、」
髪を結い上げ、黒曜のドレスを身に纏った彼女が苦笑する。
首筋からデコルテにかけては一見素肌のようだが、実際は霞のようなリバーレースに覆われていた。
大きくひらいた襟ぐりはドレスより少し淡い色のリボンで彩られ、少女らしい線の細さを強調している。
くるりとターンしてみせると、フィッシュテールスカートがふわりと揺れた。