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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第8章 気高き華【🦾主 ← 🫖 & 🌹】


「死に、な、さ………、」

すべての天使たちを殲滅したふたりは、彼女のもとへと駆け寄った。



「ヴァリス、………ヴァリス!」
ぺち、ぺち、と軽く頬を叩くけれど、瞼がひらく気配はない。



「おい、あれ……やばいんじゃないか……? たしかあの女って、」



「あぁ、悪魔執事どもの女主人だ……。」

囁き合う声が彼らの焦燥を煽る。その間にも、石畳に広がる紅の染み。



「リュシカ、………リュシカ! 無事なのか……!?」

姿をみせたのは街医者だった。ざわめく人々をかき分けて、こちらへとやって来る。



「父さん、私は大丈夫よ! でも、あの人がわたしを庇って………。」

彼は倒れたままのヴァリスをみて顔色を変える。



「あんた達、一緒に来てくれ。………娘のお礼に、私が彼女を診よう」



「! いいのか?」



「あぁ。人の命ほど尊く、大切なものはないからね」

みずからの外套を脱ぎ、その身を包んで抱き上げる。



「……いこう」
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