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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第8章 気高き華【🦾主 ← 🫖 & 🌹】


(あんたと生きると誓ったんだ。

俺は、こんな処で負ける訳にはいかねえ……!)

心臓が破裂しそうなほど力強く脈うっている。

すばやく息を整えながら、その唇が不敵な弧を描いた。



「おいおい……もう終わりなのか?」

刃に映るは、天使たちの濁った瞳。飛び退くように離れると、その胸を貫いて。



「主様は私の後ろへ……! 絶対に離れてはいけませんよ」

手にした槍を振り回し、その羽を壊していく。

鈍い音がして、金色の刃が翼を切り裂いた。



返り血を手の甲で拭う。
その紅玉の瞳は、常の柔いひかりを宿してはいなくて。



冷たささえ感じる眼が、すぅっと細められた。

彼らの心臓の辺りを見据え、すばやく持ち直した。



「ックソ、数が多いな……。」

思わず舌打ちが零れる。

とん、と背を合わせたアモンが、咎めるように告げた。



「ボスキさん、油断しちゃ駄目っすよ」



「あぁ、わかってる……!」

はぁ、はぁ……と荒い呼吸をくり返しながらも、刃を振るいつづける。

滴る汗が水晶の如く煌めいた。



『死になさい。命のために』

天使たちはどこまでも愚直だ。

その光なき眼が、一斉に彼女へと向けられる。



(まずい……!)



「ベリアンさん! 主様を……!」
『頼む』。その言葉は儚くも消え去った。



「きゃああぁっ!」

村娘をかばった彼女が、その肩を貫かれたのだ。

ぽた、ぽた、とその頬に落ちる、涙の雫のような鮮血。



「ヴァリス……!」

茉白のドレスを汚す、紅。倒れかけた彼女を抱き留めたのは。



「主様、………主様!」

真っ青な顔で、彼女を呼びつづけるベリアン。

頬にふれても、その瞼は震えるだけで………。



「っボスキさん!」



「あぁ、さっさと終わらせるぞ……!」
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