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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第7章 確認のキスは波乱のあとで【🌹 → 主 ← ❤️‍🩹 ✉】


かのように思われたが。



室内に悲鳴が響き渡った。



彼女が叫んだのではない。

彼女にのしかかっていた彼らが突き飛ばされ、後方を振り仰いでいた。


けたたましい音を立てて扉が破壊される。ついでふた組の足音が響いた。




「主様……!!」

姿をみせたのはアモンとラトだった。

ふらつく足を叱咤して、彼らのもとへと駆け寄る。




しがみつく彼女を、力強い腕が抱き留めてくれる。




薔薇の花と、図書室の古書の香りがした。彼らの匂いだ。

他のどんな芳香よりも、彼女を安心させる香り。



「主様、もう大丈夫ですよ」
アモンに抱きしめられ、彼女は泣きながら頷いた。



「アモンくん……この羽虫をどう甚振りましょうか」
楽しげな声がして、彼女はラトを見上げた。



くふふ。紅い唇をつり上げて、じりじりと彼らを追い詰める。



「なっ……あんた達………!」

彼らのおもてからは先刻までの威勢の良さは跡形もなく消え去り、

後ずさる背が壁とぶつかった。



「そうっすね……。オレ、優しいっすから、何度死にたいか聞いてあげますよ」



「駄目だよ、ふたりとも!」
驚く瞳が彼女へと注がれる。



「わ、わたしは大丈夫だから……。その人たちを傷つけないで………。」



「何言ってるんだ……!?」
胸倉をつかんだ手が壁へと叩きつける。



「運のいい羽虫さんですね……。次は見逃しませんからね?」

にこりと微笑むけれど、その眼は微笑っていない。



「っくそ……!」
悪態をついて、我先にと逃げ出していく。
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