第7章 確認のキスは波乱のあとで【🌹 → 主 ← ❤️🩹 ✉】
「ん………。」
ひんやりとした空気を感じ、彼女はゆっくりと瞼をひらいた。
軋む頭に手を当てながら半身をおこして、瞳を巡らせる。
薄闇に包まれた、地下室のような場所。
壁に取り付けられた燭台が、かろうじて黒曜を散らしている。
扉と通路は鉄格子によって切り離され、しゃら……と鎖が音を立てた。
「っ………!」
片足には頑丈そうな枷がつけられ、まるで囚人のように壁と繋がれている。
そのさまに、心からぞっとした。
コツ、コツ……と足音が近づいてきて、彼女は視線を上げた。
姿をみせたのは、見知らぬ男達だった。
「起きたのか。………まぁでも、」
『そのほうがずっと楽しめるよな』。
見知らぬ男は野卑な笑みを浮かべ、舐めるようにヴァリスの身体を検分した。
「っ……ムーは何処にいるの、」
内心の恐怖を呑み込み、強気に訊ねる。
「ムー?」
そのうちの一人の片眉が上がる。
「私と一緒にいた猫です」
自分の身体を抱きしめるように腕をかけ、それでも瞳はまっすぐに彼らを睨めつけた。
「あんた……自分の状況がわかってるのか?」
くすくすと揶揄交じりな声。予想に反して、返ってきたのはしたたかな一言だった。
「あなた達が最低だってことはわかるもの」
その言葉に、したたかに腕をつかまれる。
「いやっ……!」
その力強さに悲鳴を上げると、彼らは囁いた。
「そんな眼をするもんじゃねえよ、『主様』。
男は反抗的な女ほど、屈服させたくなる性なんだから——」
その一言に身体が凍る。唇を噛みしめ、拒絶を呑み込んだ。
静かになった彼女に暗い笑みを浮かべ、その唇が降ってくる——。