第7章 確認のキスは波乱のあとで【🌹 → 主 ← ❤️🩹 ✉】
「いい天気ですね、主様!」
先往くムーが微笑いかけてくる。
「うん。すごく気持ちがいいね」
二人が訪れたのは、中心街エスポワール。夕陽が降り注ぐ街は、活気にあふれていて。
「主様、買いたいものって……?」
「アモンが私のために、ヒマワリを育ててくれているの。
だから彼に……なにかお礼がしたくて、」
微笑うおもては本当に幸せそうで、ムーの胸に温かさが染み込んだ。
「主様は本当にお優しいです!」
ムーの言葉に、彼女の瞳がわずかに翳る。
「主様……?」
「ぁ……ううん、」
取り繕うように笑みを浮かべると、ムーは彼女にすり寄った。
「どうしたの、ムー……。」
フゥ……!と毛並みを逆立て、前方を睨みつける。
憎しみのこもった瞳が、一斉に彼女へと向けられた。
「ムー、こっちに……!」
気づいたときには、もう遅くて。
暗がりから伸びてきた手が、彼女の唇を覆う。
口元にあてがわれた布は、息を吸ったらきついアルコール消毒液のような匂いがした。
(これ、は………。)
麻酔薬だ。ルカスの治療を受けた時、かいだ匂いとよく似ている。
もっとも、この匂いより遥かに薄められたものだったが………。
だんだんと身体から力が抜け落ち、瞼が下がっていく。
主様、………主様!
ムーの声が、どんどん遠くなっていく………。