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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第5章 あなたと紡いだ時間たち【All Characters ✉】


「皆……私のためにありがとう」

心からの言葉。他の執事たちに囲まれている彼女は、本当に楽しそうで………。



「……………。」

ちくりと僅かな棘が胸を刺す。

彼女と想いを通わせてから、どんどん欲深くなっていく自分がいて。



「……ベリアンくん」
声をかけてきたのは、グラスを手にしたルカスだった。



「主様はお優しいね」
そっとテーブルに置くと、ラムリに微笑いかけているおもてをみつめている。



「えぇ、………本当に」
優しいひかりを宿す瞳。その視線は、彼女だけをとらえていた。



「『私などが』と考えるのは、キミを選んでくれた主様に失礼だよ」

みひらく視界の先で、いつになく真剣な瞳が映る。



「キミの傍にいる瞬間が、主様を一番笑顔にしている。私は、そう感じるんだ」

柔らかな微笑。彼の意図を汲み取り、ベリアンは心からの笑みを返した。



「ありがとうございます、ルカスさん」



「フフッ……いえいえ」

その視線の先に、談笑している彼女の姿。柔く解けた瞳で、微笑うおもてをみつめている。



「そろそろ行っておいで」



「! ルカスさん」



「主様だって、キミとの時間を一番望んでいる筈さ」
からかうような笑みに、頬に微熱が宿っていく。



「はい。………では、また」
彼女の元へとつま先を目指す。その後ろ背を見送ると、グラスを手に取った。



グラス越しにふたりを透かす。



(主様……貴女が彼と幸せであれる未来を守るよ)
ワインとともに飲み干したのは、胸のなかの温かな感情。
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