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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第5章 あなたと紡いだ時間たち【All Characters ✉】


「皆……お待たせ」

彼女が姿をみせると、皆一様に華やいだ顔になった。

微笑みを浮かべて彼女をみつめている。



「主様、座ってください! オレ……主様のために頑張ったんです」

そう言って椅子を引いてくれるロノ。



「わぁ……っ!」
思わず感嘆を洩らす。



ガーベラの花で飾られたテーブルに、彼女が好きな食べ物を並べられ。


お揃いの色彩のクロスに、食堂内の至るところで咲き誇る花。



その華やかな香りを吸い込んで、彼女は微笑んだ。



(ガーベラ……この世界だと手に入りにくいって聞いていたのに、それでも用意してくれたんだ)

じんわりと、温もりが広がる胸の内。



「ねぇ……皆も一緒に」

そう言って一同をふり返る。



「宜しいのですか?」

真意を訊ねたのはハウレス。



「勿論だよ。それに……誕生日は大勢で過ごすものでしょう?」

ふわりと微笑むと、そのおもてに朱が集う。



「では……失礼いたします」
優雅に一礼して、皆が椅子にかけていく。



「主様、………これを」
フルーレが微笑んで、胸の前に掲げていた箱を渡してくる。



「ありがとう」
笑みをのせて受取り、リボンを解く。



「素敵………。」

中身はドレスだった。



薄桃色の地に、大きくひらいた襟ぐりには白薔薇が飾られている。



スカート部分は三段に切り替えられ、裾に縫い込まれた水晶の粒やスパンコールが煌めく。



揃いの靴と髪飾り。

シンプルな意匠であるのに、

砂糖菓子のような甘さの滲むそのドレスに、彼女はただ見惚れるばかりだった。



「……俺たちからだ」

「手を出してくれ」と告げられ、そろえて出した掌に、小さな包みが落とされる。

丁寧にラッピングをひらくと。



「綺麗………。」

中身は香油だった。小瓶を傾けると、とろりとした液が灯りを反射して煌めく。



「ガーベラの香りの香油っすよ」

微笑むアモンが説明してくれる。



「主様、………主様! ボク達からもどうぞ!」

無邪気に微笑って、ラムリが手渡してくる。



中身は日記帳だった。



表紙は重厚な黒絹張りで、

ひらくと蔓薔薇を型どった罫線が引かれており、ただ眺めるだけでも楽しかった。
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