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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第4章 今宵は貴方と【✝️ ⇋ 主 ← 🦾 & 🌹 ✉】


お茶会は限りなくなんの変哲もなかった。紅茶を片手に、甘いお菓子を口にする。



「ねぇ……あの方々、素敵ね」



「本当に……。何処の家柄の方なのかしら」

隠しきれない会場の女性たちの声が、彼女の耳にも届いていた。



(っ………。)
もやもやと、胸のなかを混沌が淀みはじめる。



「ヴァリスさん……?」
フェネスの声に、「なんでもないわ」と微笑って見せる。



上げた視線の先で、彼女を食い入るようにみつめる青年貴族。



しばし瞳が見交わされ………。

やがて、彼は逃げるように会場を出ていった。



ゆっくりと立ち上がる。



「化粧室にいってくるわ。ここで待っていて」

着いてくると言う彼らを残して、彼のあとを追った。
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