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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第4章 今宵は貴方と【✝️ ⇋ 主 ← 🦾 & 🌹 ✉】


カタ、カタ。ゴロ、………ゴロ。

馬車に揺られながら、彼女はきゅ、と胸元を握りしめた。



「緊張してるのか、主様?」

彼女をみつめるボスキの眼差しは優しい。その瞳に笑みを返しながら、彼女は頷いた。



「うん……。だって、お茶会なんて初めてだもん」

ふふ。苦笑交じりに微笑う。



「会場中の女性たちのなかで、きっと主様が一番お美しいっすよ。

オレが保証するっす!」

その言葉に、張りつめていた心が、わずかに解けるのを感じた。



「ありがとう、ふたりとも……。」
微笑んだヴァリスのおもてを柔くみつめるふた組の瞳。



やがて止まった馬車。



「いこう、あるじさ……ヴァリスさん」
微笑んで手を差し伸べる。


「えぇ」



◆◇◆◇◆◇◆◇



会場は黒一色だった。

ゆらゆらと炎の揺れる蝋燭や、釣り下がるシャンデリアでさえ、黒曜に煌めいている。



「うへー、なんか不気味っすね」

わずかに顔をしかめるアモン。



「アモン、………口調」

ハウレスに咎められ、「ごめ……んっんーっ、すまない」と咳払いとともに言い直す。



「ヴァリスさん、あっちの席が空いているよ」

エスコートするように手を引くフェネス。



「うん、いこう」
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