第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
コツ、コツ………と五組の足音が響く。
アンリリス伯爵家の従者と名乗った男の先導で。
その間も、いくつもの視線が一行へと注がれる。
「なぜ、あの小娘が………。」
「アンリリス伯爵たっての招待ですって」
「まぁ! なんと図々しい……!」
シロは無言で瞳を巡らせて、不愉快そうな眼差しでヴァリスの全身を検分する貴婦人たちを睨み付ける。
「「!」」
途端、気圧された婦人たちの囁き声がピタリと止まる。
「……シロ」
けれど彼の言動を上塗ったのは、他でもないヴァリスだった。
唇を微笑に形づくり、彼の腕に指をかける。
そして、そっと頭を振った。
「ハァ、………お前がよいなら従うとしよう」
そう呟くと、ほっとしたように瞳を解いた。
「(ありがとう)」
声なき言葉でヴァリスが紡いだ時。
「ここがダンスホールでございます」
優雅な音楽が耳を打った。
華やかにドレスアップした紳士淑女が、グラスを片手に談笑している。
シロが瞳を巡らせると、金髪を麗しく整えた ひとりの青年貴族と視線がかち合う。
招待状の差出人である、フェリス・アンリリス伯爵だ。
談笑していた貴婦人たちに一声伝え、優雅な足取りでこちらへと歩み寄ってくる。
「お招きいただき感謝いたします」
彼女の傍らに控えていたルカスが呟くと、フェリスは唇をひらいた。
「ルカス殿……! 久しいな、君は相変わらずのようだ」
そう言って微笑んで見せる。
けれどその微笑には
ちくちくと突き刺さるように仄かな棘が滲むようで、シロは僅かに柳眉を寄せる。
笑顔のまま互いを探り合うように見つめ合うふたりに、ヴァリスは怯えたように双方を見比べた。
知らず身を震わせるヴァリスに気づいたベレンが彼女を庇うように背に隠す。
シロも指を伸ばし、彼女の背にそっと掌を添えて、
自分の動じない心を温もりとともに伝うようにその儚い背を支えた。