第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 🤍→主←🐾 ♟️】
「君たちの「主様」に、次の一曲を申し込んでもいいかな?」
そう言って、右手を自分の胸の前に置き、恭しい所作で一礼して見せる。
「………。」
「………………。」
顔を見合わせる三人を見かねて、ヴァリスは自分を守るように広げたベレンの片腕に指をかけた。
「!」
「(何か遭ったらすぐに呼ぶから)」
声なき言葉でそう告げると、差し伸べられた掌にそっと儚い指を重ねる。
「ありがとう」
指を重ね合ってダンスホールの中央に滑り出ると、
周囲から驚きの声がさざ波のように広がった。
と同時に、貴婦人たちの妬みと嫉妬に染まりきった視線が一斉に彼女へと注がれる。
手にした扇で唇を隠して、ひそひそと囁き合う眼差しは、
教養のないと看做されているヴァリスが、
失敗に無様な姿を晒す光景を心待ちにしているようでもあった。
四方八方から注がれる、棘を含んだ視線に動じることなく、ドレスの裾を持ち上げ、カーテシーをする。
そして優雅な所作で彼の手を取った。
「「っ………!」」
華やかに、しなやかな子鹿のように。
その所作は完璧で、
どんな名家に生まれた姫君にも引けを取らない程の気品と威厳に満ちていて、
彼女を嘲笑しようとしていた貴婦人たちが悔しそうに吐息を封じた。
「踊るのがお上手ですね。まるで羽を抱いているかのようだ」
「私には優秀なダンスの先生がおりますから」
そう呟くヴァリスの唇は優しい笑みを湛えている。
そして、壁際に立っている三人に視線を向けた。