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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第27章 今宵はふたりで【過去作派生中編 ‎🤍→主←🐾 ♟️】


ヴァリスの横顔を見つめながら、シロはナックから告げられた手紙の内容を反芻する。


『仮面舞踏会の最中———いえ、向かう道中も、主様から決して目を離さないでください』



『当然であろう。それでなぬとも、あやつはあの男に目を付けられて———、』



『シロさん、………これを』

そう言ってナックが懐から取り出したのは、二つ折りにされた黒いカードだった。

そっと受け取り、カードをひらくと。



『君と話がしたい。

わが館に到着したら、私の元へ来てくれ。

ひとりでおいで。………君の知らない君の真実を教えてあげるから』



「これは………、」

眉を寄せると、ナックは重々しく頷いた。



「えぇ。あの方の目的は———、」

けれどその回想のような思考は、ヴァリス自身の声によって途切れた。




「シロ?」

己の名を呼ぶ。無意識に触れていた、腰に穿いた剣の塚から指を外し、彼女の瞳を見下ろした。



「どうかしたのか」

その瞳が心配そうにゆらめいている様を見留める。

常ならば温かな光を宿すアウイナイトの瞳が、少しだけ厳しさを映していた。



「シロこそどうしたの? さっきからあなた………ぼーっとしてない?」

そう言って指を伸ばしてくる。

絹の手袋越しに触れた指は温かく柔らかで、

その手を取ったあの日と変わらない温もりを宿していた。
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