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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第4章 今宵は貴方と【✝️ ⇋ 主 ← 🦾 & 🌹 ✉】


迎えた 黒のお茶会の前夜。


「主様、いま宜しいでしょうか」

控えめな叩扉のあと。とらえたのはハウレスの声だった。



「どうぞ。入って」



「失礼いたします」

丁寧に断りを入れて、彼が足を踏み入れてくる。



途端、魅入られた。



彼女の色彩によく映える、黒一色のドレス。



首筋からデコルテにかけては一見素肌のようだが、実際は霞のようなリバーレースで覆われている。



大きくひらいた胸元には精緻な蔓薔薇の刺繍が施され、縫い込まれた銀糸が煌めいて。



スカート部分には陰影の美しいドレープが贅沢に使われ、人魚の尾ひれのごとく ひらひらと舞った。



髪にはドレスの共布で造られたリボンが編み込まれ、

細心の注意を払って散らされた後れ毛は念入りにカールされていた。



「ハウレス……?」
とまどった瞳で見返してくる。



「お綺麗です、主様……。」
心からの賛辞を贈ると、彼女の頬が染まる。



「良かった……。ちょっと恥ずかしいけれど」
苦笑交じりに微笑む。



「お手をどうぞ、主様」
優雅な所作で手を差し出す彼。



「ふふ……はい」
そっと、手を重ねた。
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