第20章 月嗤歌 ED Side Ａ - II【別邸組 ＊♟】

｢っ………主様、こっちを見て！｣

バッと目隠しが外されて、拗ねた表情のテディが視界に映る。

水音と打擲音。厭らしい音を響かせながら最奥を捏ねられ、歯を立てぬように舌先を這わせた。



｢ひぅっっ！ んんんぅ………！｣

こん、こん、とノックとするように叩き付けられて、くぐもった艶音が零れる。

快楽を歓迎するように、うねうねと蠢く内壁がより彼の象徴を締め付けた。



｢主様、………私を見てください｣

無我夢中で内側を征服されながら、ユーハンの指が彼女の髪を絡める。



｢！｣

その髪に愛おしそうに口付けられて、はっと吐息を封じる。

名残惜しそうにその指を解きながら、ユーハンは唇をひらいた。




｢あなたに見つめられる度に、………私は、恐れを抱いていたのです｣




｢………？｣

問うように瞳をみつめれば、その薄い唇が苦みの滲んだ弧を描いた。



｢この胸にいだいてきる感情を、あなたに見透かされてしまいそうで………。


あなたが誰かをみつめる度に、その唇から他の皆さんの名が紡がれる度に、

どれ程嫉妬したでしょうか｣

そう自嘲する彼の指を舐める。そして密やかな微笑を浮かべそっと首を振った。




｢大丈夫よ、ユーハン｣




｢！ 主様｣



｢私は、誰一人として嫌いになんて、ならないから｣

微笑うおもてに優しさを滲ませれば、ぐっと指が囚われる。



｢あなたは、………いつも私の欲しい言葉を授けてくださるのですね｣

薬指に口付けられ、「くすぐったい」と微笑う。

くすくすと笑みを零していると、反対の手首が取られた。



｢ハナマル？｣

彼の纏う空気が変貌っていることに気づき、トクリと新造が甘く脈打つ。



いつものこちらの意図の鎖をすり抜けるような飄々とした笑みを浮かべておらず、

また生来の彼の芯の強さを感じ取れる、甘やかなひかりを消し去った真剣な瞳。



｢………？｣

指を伸ばせば届く位置に、彼のおもてがある。

密やかな笑みを描きその瞳を見返した。



｢どうしたの、ハナマルがそんな眼をするなんて珍し———んんっ！｣

近づいてきた唇が彼女のそれを奪う。



突然のキスにみひらく眦を、そっとなぞるかさりと荒れた指先。

影で鍛錬を重ねる彼の為人が現れているように感じて、染みのように広がる感情。