第20章 月嗤歌 ED Side A - II【別邸組 *♟】
「んぅ、………ぁ、」
柔らかく、壊れものを扱うような優しさが滲むその所作に、吐息のような艶音が零れる。
唇で手袋の指先をかみ外すと、古傷だらけの掌が彼女のデコルテに乗せられる。
極限まで優しい指が繊細な手付きで胸元を辿り、そして豊かなふくらみを包んだ。
「ひぅっ!」
優しく、それでいて柔らかな胸の感触に楽しむように、
ゆったりとした手付きで捏ねはじめ、ヴァリスは後方を振り仰いだ。
「ぁ、………っあ、そんな、触り方……!」
乱れ髪をなびかせてハナマルを見上げる。
その掌に込めた力は決して強くはないのに、その指の所作はこの上なく淫猥で、
それだけに彼の掌の感触をより鮮烈に感じ取ってしまう。
ごつごつとした剣だこが乳輪をかすめ、びくりと身を震わせてしまうと、その口角が上がった。
「んー? 俺が……なに?」
くすくすと微笑いながらも、その指は止まらない。
先刻の情事の名残もあり、段々と身体の熱が再燃しはじめた彼女の唇を奪ったのはユーハンだった。
「んんっ……!」
吐息さえも奪うようなキスだった。
口腔内に滑り込んできた舌先は、彼女への遠慮も配慮も消え去っている。
ただヴァリスの舌と唇を求めて烈しく重ね合わされ、
くぐもった艶音はユーハンの唇によって吸い取られた。
そしてキスで唇を塞がれたまま、ユーハンの白魚のような指が彼女の胸へと伸ばされる。
ハナマルは右胸を、ユーハンは左胸を。
二人の掌のなかで豊かな胸が彼らの指によって、自在に形を変える。
「あ、………あぁ、………んうっっ」
その厭らしい光景を見ていられなくて、必死に身を捩るけれど、
正面からより強く抱きしめられることで封じられる。
「どうか逃げないで」
自分の熱を刻み込むように、一分の隙間も与えぬ程に強くつよく包み込まれる。
「っ………。」
重なり合った素肌の胸から急く生者の証が伝う。
ユーハンとハナマル。
正面と後ろ背に昂った象徴が仄かに押し当てられていることを、
深い霞に覆われつつある思考の奥でとらえた。