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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第18章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


(ち、近い)



「ナック、いったん私を離してみよう?」

紅くなってじたばたと身動ぐヴァリスに微笑んで、さらにその身を引き寄せる。



「なんだ、恥じらっているのか? ………ならやめない」

それより一緒に眠ろうぜ、とさっさと瞼を下ろす彼にヴァリスは困り果てた。



彼の腕のなかにいるのはなんだか落ち着かなくて、ばし、ばし、と半ばしたたかにその背に手を打ち付ける。



「うん、………あのね。ナック、いったん私を抱きしめるのをやめてみようか」

すう、………すぅ。頭上から聴こえてくる寝息に困ったように眉を下げた。



「もう……。」

抵抗を諦めたヴァリスはそっと彼の胸に身を寄せる。

起こさぬように気をつけながら、自分を抱きしめたまま眠る彼のおもてを見上げた。



「すぅ、………すぅ」

穏やかな寝息にすべての惑いが融けていき、もう一度指を伸ばして彼の頭を撫でた。



「おやすみ、ナック」

指にふれた巻き毛はさらりとしていて艶やかで、心做しかその表情は安らぎを感じているように視えた。




トク、………トクッ、と彼の規則正しい生者の証を聴いていると、

みずからの瞼も重くなってくる。



(起きたら、……皆に………、)

眠りに落ちていく寸前、誰かの呼び声が聴こえた気がした。
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