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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第18章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


(クマが酷い……また充分に眠ってないんだね)

ベッドサイドテーブルにグラスを置きそっと頭を撫でると、ぴくりと瞼が動いた。



梨の花弁を思わせる瞼が震え、そしてひらかれる。



「お嬢……?」

起き抜けの瞳が柔らかく和む。

酒に酔いしれゆらゆらと揺蕩う瞳は、蜂蜜を混ざりあわせたようで………。



「っ……まだ寝ぼけているの」

優しいいろの眼差しを注がれ、とぎまぎと心を惑わされていると、ナックの指が伸びてくる。



「きゃっ……!?」

ぐっと手を引かれ寝台に倒れ込む。

驚いて瞠目した瞳の先で、愉しげに唇を曲げる彼の姿があった。



「つかまえたぞ……お嬢」

眼鏡を外した互い違いの色彩の双眸、切り裂くようなひかりを放つ双眸。

唇を好戦的な笑みに染めて、その腕のなかへと閉じ込めてくる。



「あんたのほうこそ大丈夫なのか」

逃げられないようにしっかりと抱き込んで、瞳を覗き込んでくる。



いつもとは違う彼の眼差しに、ざらりと心が波打つ。

戸惑いと動揺、………そしてほのかに高鳴る生者の証をともなって。
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