第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
「急な訪問を歓迎してくれて、
貴殿の厚意に感謝いたしますわ、カレッセン公」
ヴァリスは言った。
カレッセン公は煙るようなすみれ色の眼を細めた。
「いつでも歓迎いたしますよ。遠くまでよくおいでくださいました」
「早速、他のみなを紹介しましょう。
全員、わたくしの生家から連れてきた、わたくしの信頼する友人ですわ。
端から紹介すると、そちらにいるのが———」
「アリエ殿」
カレッセン公は大きなルビーの指輪を嵌めた右手をゆっくりと上げた。
「わざわざご紹介いただくには及びません。
エーファンから聞いて、皆様のことは承知しておりますので」
「誰がだれなのか、言わなくてもわかると?」
「このような僻地に身を置いていても、必要な情報は入ってくるものですよ、アリエ殿。
そちらの見事な紅と漆黒の御髪の貴公子はルシウス・トンプシー殿、
あちらの碧髪の巻き毛の美丈夫はご友人のナルス・シュタイン殿、
紺碧の髪の麗しい御仁はボスウェル・アリーナス殿とお見受けします。
銀糸の御髪の御方はベリアル・クライアン殿ですね」
一人ひとりと目を合わせ、カレッセン公はすらすらとその名を口にする。
それから薄い唇に笑みをのせた。
「わが城へようこそ、皆さん。貴女様の御一行を心から歓迎いたします」
「それでは、この記念すべき出会いを祝いましょう」
彼女がゴブレットを掲げると、カレッセン公は微笑んだ。
「よろこんで、アリエ殿」
うなずいたカレッセン公は、ふと思い出したように、
「あぁ、その前に……ボスウェル殿?」
すみれ色の眼がまっすぐに向けられ、ボスキは慌てて応えた。
「はい、公爵殿?」
「貴方の質問にまだ答えていませんでしたね」
一同には一瞬、なんのことだか分からなかった。
私の年齢のことですよ、と
カレッセン公は手にしたゴブレットをエーファンにむかって差し出した。