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訳アリ主と恋スル執事たち【あくねこ短編集】

第17章 砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】


(もうすぐ晩餐だね。カレッセン公のとの初対面だし、それなりに飾らなくては)

寝台から腰をもち上げ、冷たい水で顔を洗う。


薔薇水をたっぷりと吸い込ませた肌に白粉をはたき、紅をひく。

それから、長い髪にブラシをかけた。


長時間風にゆられていた髪はいつもより軋んで、櫛の通りが悪かった。



「……これを使うか、主様?」

ボスキが自分の愛用のヘアオイルの小瓶を差し出してくる。

そっと受けとって、微笑んだ。



「ありがとう、お借りします」

毛先にヘアオイルをつけ、根気よく梳いていくと、さらさらとした髪が踊るように舞った。



サイドアップに結い上げて、

星のような宝石ピンをいくつも挿し、薔薇の髪飾りをとり上げる。



鏡の前でせっせと髪をつくっていると、ルカスは微笑んだ。



「私は主様が髪を編んでいる場面を眺めるのが、たまらなく好きなのです」

彼女の手からそっとコサージュを抜きとると。



「女性がそうして指先を駆使して、御髪を飾る風景は、見ていてとても楽しいのです。

………さて、いかがですか?」

髪につけて、肩に手を添え問いかけてくる。

まっすぐに褒められて、戸惑いにその瞳が曇った。



「もう……皆も準備しないと………でしょう?」

やんわりと咎めるも、彼らはただにこにこと微笑を浮かべるだけ。

何だかからかわれている気がして、ふいと視線を解いた。
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