第10章 これから
「さぁ、入るといい。千寿郎も待っている。」
杏寿郎が玄関を開ける。
「お帰りなさい、兄上、緋色さん。」
開けた玄関の音が聞こえたのか、千寿郎が奥から出てきた。
「ただいま帰った。」
声の出せない緋色は礼をした。
「今日は退院祝いですからね。たくさんお料理を用意してますよ。」
千寿郎がニコニコと話す。緋色は困ったように眉を下げた。
「俺も千寿郎も君が帰って来て嬉しいんだ。君が気にすることは何もない。」
相変わらず緋色の心は杏寿郎にお見通しのようだ。
「少し痩せてしまったようだし、たくさん食べるといい。」
俺も食べるぞ、と杏寿郎は朗らかに笑う。それを見て、緋色も微笑んだ。