第9章 この先の未来に
「胡蝶から何か聞いてるか?」
何か、とはなんだろう。毒で喉を痛めたこと以外は特に聞いた記憶はない。
「俺が話すから胡蝶からは言わないでくれと頼んでいたんだ。今後のことだ。」
今後のこと。復帰まで時間がかかるのだろうか。
「落ち着いて聞いて欲しい。君には鬼殺隊を辞めてもらう。」
予想外の言葉に、緋色は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
「毒を吸ってしまって、肺がずいぶん傷ついてしまったそうだ。もう呼吸は使えない。使ったら、肺が壊れて死んでしまうそうだ。」
緋色の目から、ぽろり、と涙が一粒落ちた。
「リハビリが必要だが、日常生活は送れるようになるそうだ。ただし、呼吸と一緒で、激しい運動は、今後出来ないと言われた。」
そうしたら、今後どうやって生きていったらいいのか。姉を失い、姉の弔いの為に始めた鬼殺隊も辞めなければならない。激しい運動が出来ないなら、隠の仕事も出来ないだろう。緋色はパニックだった。涙が溢れて止まらない。
「すまない。泣かないでくれ。君が泣くと、どうしていいか、わからない。」
杏寿郎は、緋色のおでこに口付けた。