第5章 緋色の秘密
「姉に昔言われたんです。『緋色は表情豊かね。もっともっとそれに気づいてくれる人が出来るといいわね。』って。それを思い出してしまって。」
杏寿郎は緋色の手に自分の手を重ねた。
「辛いことを思い出させたようで申し訳ない。だが君の話しを聞けて、とても嬉しく思う。」
杏寿郎は重ねた手を、ぎゅっと握る。緋色の目を見ると、涙は流れていなかったが、泣いていた。
「緋色、好きだ。」
緋色の瞳が変わる。もう泣いていなかった。
「俺にもだいぶ君の考えてることがわかるようになった。だから自惚れてもいいだろうか。
緋色は、俺のことが好きなんだろ?」
緋色はすっ、と視線を下げた。杏寿郎は緋色が恥ずかしい時に視線を下げる癖がある事に気づいていた。
「緋色。」
あまりにも優しい杏寿郎の声に促され、緋色の口からも声が溢れる。
「、、、好き、です。杏寿郎様。」