第3章 相手を知るということ
杏(どうするのが正解だったのだろう。心なしか元気が失くなったように見える。)
そう思うとどうにかしてやりたくなり、ストレートにぎゅっと手を握り直して気を引いた。
りんがそれに驚いてパッと視線を上げると、杏寿郎はその瞳を真っ直ぐ見つめ返す。
杏「何か間違えてしまったのならすまなかった。無理強いはしないが不満があれば言ってくれ。君を大事にしたい。大事に思っている。」
それを聞くとりんの不安が優しい温度に溶けて無くなっていく。
(杏寿郎さんは私と違って真っ直ぐで本当に心が綺麗だな…。意識されてなくても、今は大事に思われているだけで十分だ。)
りんはそう思うと眉尻を下げながら柔らかく微笑んだ。
「いえ、不満なんてないです。」
そうは言われても先程は確かにおかしかった。
杏寿郎は少し困ったような顔になってしまった。
杏(そういえばりんさんはあまり俺に触れようとしてこないな。先程は俺に合わせて握り返してみてくれたのだろうか。)
そう思いながら微笑むりんの頭を撫でる。