第3章 相手を知るということ
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(心臓止まるかと思った。)
ようやく胸の中から解放されたりんは今、杏寿郎に手を引かれている。
りんはさらりと繋がれた手を見つめた。
(ちゃんと女として見られてるのかな…。愛らしいとか愛おしいとかは言ってくれるけど、なんだかさらりと言い過ぎているような…。)
そう思いながら手をぎゅっと握り返してみる。
すると少し前を歩く杏寿郎の体が少し揺れた。
杏「…何だろうか!!」
杏寿郎はそう問うばかりで振り返ってくれない。
りんは少し駆けて隣に並び、顔を覗き込んでみた。
(……笑顔。)
りんは杏寿郎が表情を崩さなかった事に少し凹みながら『何でもありません。』と伝えた。
杏(俺の反応を見ていたのだろうか。)
一方、 "笑顔のようなもの" を浮かべて取り繕っていた杏寿郎は、視線だけ動かして俯くりんを見つめた。