第3章 相手を知るということ
「………………………。」
杏「中学の時、宇髄には他校の彼女がいるという噂があったろう。あの噂に巻き込まれたのがりんさんだ。それからこの子は周りが作ったイメージに振り回されて生きてきた。」
「ん"ー…っ」
りんが杏寿郎の胸を遠慮気味に叩くと、杏寿郎は少しだけ腕の力を抜いてりんの顔を覗き込む。
「な、なんで…離し」
杏「まだ赤いな。あまりそのような顔を男に見せては駄目だ。」
杏寿郎がそう言って再び胸にりんの顔を隠すと、りんは諦めたように動かなくなった。
天元はりんの耳がこれ以上ないと言う程赤くなっているのを確認すると、どこか座れる場所が必要になるだろうと判断した。
天「とりあえず移動しよーぜ。おい、りん。お前の最寄り駅いい加減教えろ。」
その言葉を聞いた杏寿郎は目を丸くした。
胸の中のりんを見下ろすとふりふりと首を横に振っている。
小「流石従姉妹といったところか。随分と宇髄に懐いているな。良い拒絶っぷりだ。」
実「正しい感性だろォ。」
杏「……彼女については俺が責任を持って家まで送り届ける。せっかくこの駅で降りてもらったんだ。ここで探そう。」
天元は杏寿郎の申し出に少し目を細めたが、りんの住む場所を知る珍しい存在を前に閉口したのだった。