第3章 相手を知るということ
一方、藤川の方はそんなりんの『だからどうしたのだろう。』という雰囲気を見て眉を寄せていた。
藤「先程、先週末に君が男を交えた酒の席を開いていたと聞いた。それは本当なのか。」
上司が気持ち良く仕事をできるように、秘書は上司のプライベートをある程度把握しておく必要がある。
しかし、上司が秘書のプライベートを知る必要はない。
明らかな過干渉だ。
「……確かに開きました。」
藤「君が幹事だったのか。男側の幹事は誰だ。」
急くような聞き方にりんは気圧された。
「い、従兄弟です。その人に頼まれまして…私が女側の幹事を務めました。」
藤「その従兄弟とは…その、恋人関係に」
「違います。」
りんは言葉を被せてしまってからハッとした。
つい昔を思い出してムキになってしまったのだ。
「も、申し訳ありません。ですが従兄弟とはそういった間柄ではありません。今までもずっとそうでした。兄のような存在です。」
藤川はその答えを聞いて安堵した。
藤「…そうか。それなら良いんだ。ありがとう。」
「…………はい…。」